何が正しいか
施設で、外部の方々の送迎から帰ると、職員が血相変えて近づいてきた。
「 ○○さんが意識がありません。 」
走ってお部屋へと向かう。
もう一人の看護師がAED をセットしていた。
AED からの音声。
「 AED は不要です。
心肺蘇生を続けてください。 」
どこの動脈からも脈拍が触れない。
「 聴診器‼ 」
心音も肺の呼吸の音も聞こえない。
AED は不要ですって・・・
どういうこと⁉
心拍が弱い・・・ってことか❗
即座に心臓マッサージを行う。
心臓マッサージを変わってもらい、人工呼吸も行った。
「 ○○さん❗ ○○さん❗ 」
大声で叫ぶが、眉間もひとつも反応しない。
涙が止まらない。
様々なことが頭を過ったんだ。
( もう逝かせてもエエんじゃないか? )
( 二人で、鳩を一緒に見に行って、頭の
上の鳩をみて、うっすらと笑ってくれた。
帰りに初詣に行って、一緒に鈴を鳴らして
お賽銭なげて。
あのとき、何を願ったの? )
( もう、結構です・・・って言ってるの? )
( 今、私がやってることは・・・誰のめ? )
( 子供さんが帰ってくるまでは・・・ )
( ○○さんは・・・・
もういいよ、もういいよって
いってるんじゃないか⁉ )
( もう1回でいいから、一緒に出掛けよ )
( お願いだから・・逝かないで・・・ )
楽にしてあげたいと思いながらも、私は、この会社の人間であることが考えの邪魔をする。
救急隊がきて、セッティングされたモニターに、30台の心拍が映し出された。
胸板が大きく沈むほどの心臓マッサージが行われながら病院へと向かう。
救急センターに運ばれ、医師へ流れを説明。
医師の一言。
「 今の時代、人工呼吸はしませんよ。
感染だとか…リスクを考えるとね。 」
わかってる。
数年前にも言われたよ。
同じような状況で。
でも、あのときも今回も仕方なかった。
感染症
大丈夫か?
って、思ったさ。
いや、目の前のこれを何とかしなきゃ❗
自分には守るものはない❗
○○さんを守りたい❗
って、自分で決めた行動なんだ。
あんたから、言われなくてもわかってるさ‼
ただ
結局は、息子さんが帰ってくるまでに間に合わなくて・・・
私がしたことは正しかったか
そこなんだ・・・